焙煎

2011年2月17日 (木)

焙煎機の排気ダンパー中立点について

ある排気の強さ(ダンパー開度)に対応する火力(ガス圧)の範囲は、かなり限定的なように思えます。火力と排気のバランスが悪いと、ボケボケな印象の味になったり渋みが抜けなかったりと上手くいきません。このため、火力調整の結果を確認するのと同様に、排気ダンパーの操作結果も細かく確認したいところですが、私の使っている富士珈機のR-103には排気風量の変化を計測する装置はついていません。

それでも排気風量の変化を確認しようと思うと、テストスプーンをぬいてテストスプーンがさしてあった穴からの空気の動き(吹き出し、吸い込み)を手をかざして確認するか、生豆ホッパーを開けてホッパー口からの空気の動き(吹き出し、吸い込み)を手をかざして確認するしかないように思います。

一方、R-103の取説の「排気ダンパー位置の中立点」の項をみると、テストスプーンを抜いて、穴からの吹き出しが無くなり、かつ吸い込みもしない開度を排気ダンパー位置の中立点として、これを基準にダンパー位置を調整しなさいと記述されています。

ところで中立点を基準にする意味ですが、私は実のところは、中立点以外の排気ダンパー位置でも、排気と火力のバランスがとれる組み合わせは複数存在するのではないかと推察しています。であるけれども、手をかざして排気の状態を敏感に感じとろうとすると、どうしても中立点から微かに吹き出すくらいまでの位置でしか計測できません。そのため、結果的に排気ダンパーの中立点を基準にして、あとは火力を決めるしかないということになると思うのです。

また、取説に記載されているテストスプーン穴で中立点を確認する方法の他にも、ホッパー口で中立点を確認することも可能です。ただし、テストスプーンの穴と、生豆ホッパーの口では空気の流れる方向に対する開口方向が違います。そのためテストスプーンの穴で中立の排気ダンパーの状態だと、生豆ホッパーの口側ではかなり強く吹き出す感じになります。従ってテストスプーン穴での中立の場合のほうが、生豆ホッパー口を基準にして中立の場合より、排気ダンパーは閉じた状態になっているはずです。

ホッパー口での中立点のほうが、より排気ダンパーは開いた状態になりますので、あわせる火力も強くなります。火力と排気が強めの焙煎を行うのであれば、ホッパー口での中立点を基準に焙煎を進めたほうがよいのかな、と思います。

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2011年1月 7日 (金)

焙煎の前半について

お蔭様で開店から4年が過ぎました。このタイミングで現時点での焙煎の考え方を整理しておこうと思います。以下に書いてあることは、特に断りが無い限り科学的な根拠は無く、私の経験に基づく考察だと理解して読んでください。

今回はコーヒー焙煎の前半の、生豆投入から薄黄色に変わるあたりまでの操作について整理してみます。

焙煎の初期段階については、生豆の表面だけ温めるのではなく、可及的速やかに生豆内部の温度も上げてやり、出来るだけ芯まで熱を通すことが、最終的に芯を残さずに煎りあげるための、この時点での必要な作業になると考えています。

焙煎機に投入された生豆は、シリンダーと接触することにより、焙煎機の予熱が「伝導」されると同時に、シリンダー内を通過する熱風による「対流」でも温められてゆきます。

「伝導」にしろ、「対流」にしろ、伝熱の基本は、温度差が大きいほど熱の移動速度が速くなるということで、これは物理の話(科学的に正しいと思われる事実)になります。従って、生豆が耐えられる範囲内で、最適な温度差(比較的大きな温度差)を作り出す意識が大切だと考えます。

「伝導」についての考え方のポイントは以下の通りです。
・焙煎機にどれだけ予熱を与えておくか
・焙煎機に生豆を投入する温度を何℃にするか
また、当店のように常温で生豆を管理している場合には、投入温度は生豆自体の温度(≒室温)を考慮して細かく設定する必要があると考えます。

「対流」については、火力と排気のバランスを考えながら設定します。当店で使用している半熱風型の焙煎機の場合には、ある程度、空気の流れを強くして熱風を豆に強く当てるような意識が必要になると考えています。言い換えると、火力はある程度強火で、排気もある程度強めに行うということです。そして、火力と排気はバランスがとれていることが重要で、弱い火力に対して強い排気とか、強い火力に対して弱い排気ではうまくいかないようです。このバランスが極めて重要なのですが、これについては、試行錯誤して最適の組み合わせを探すしかないように思います。

概ね、上記のような方針で、この段階の作業は進めます。操作を行う際、以下を工夫するとよいと思われます。

・予熱を毎回一定にするために、点火から生豆投入までの間、どのような操作をすればよいか。
・予熱が十分になったことを、どのように判断するか。
・ダンパー操作の結果生じる排気風量の変化をどのように把握するか。
・生豆の温度(≒室温)を、どのように投入温度の微調整に反映するか。
・外気温度の影響(煙突効果の大小)による排気風量の誤差をどのように把握するか。

作業中は、以下を計測しておくと、前回焙煎との結果の違いを比較できると思います。

・生豆投入後、豆温度計数値が下降から上昇に転じる温度(最下点温度)と転じるまでに要した時間。
・単位時間当たりの温度変化など。

操作がうまく出来ていれば、毎回、かなり近似した計測値になるはずです。逆に、計測値がブレた場合、例えば最下点が想定より低かったり、高かったりした場合には、火力の調整で補いますが、調整で補うということ自体、経験がモノをいう世界に入り込んでしまいます。ですので、可能な限り毎回同じ計測値になるように、事前に環境を整えるほうが無難なように思えます。

一方、この段階は、一般的には「水分抜き」とか「むらし」と呼ばれている工程の前半になります。この段階では生豆の大きさは殆ど変化しませんが、実際に生豆投入から豆温度計数値で150℃位までの間で水分量はかなり落ちているようです(以前、小型焙煎機のDiscoveryと水分計を使って検証したことがあります)。しかしながら、それは結果として捉えればよく、私はこの段階の目的は、あくまで「豆を温める」ことと捉えて作業しています。具体的には、同じ操作をした場合、水分量の多い豆はこの段階にかかる時間が少し長めになるのですが、だからといって火力を強くして水分量の少ない場合と所要時間を揃えるようなことは、現段階では行わないようにしています。

以上、焙煎初期段階の考え方でした。色々やってみた結果、このやり方がいまのところベストというだけのことで、これからも微修正は行っていくことになると思います。1年後、同じ考え方で作業しているかは分かりません。

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2010年4月 6日 (火)

直火釜と半熱風釜の違いについて【実践編】

先週、3kg釜のシリンダーを入替え、直火→半熱風に釜のタイプを変更してみました。

数値的な変化は以下の3点

・ダンパー中立点が変化(1ポイント+α程度マイナス)
・1爆ぜ開始豆温度が4℃程度低下
・2爆ぜ開始豆温度が5℃程度低下

予定より1日多くお休みさせて頂き、ダンパー設定やガス圧設定を変えて色々試しました。

特に焙煎の初期では、シリンダーと接触することによる熱の伝導の影響を強く受けるようです。逆に言うと焙煎初期では熱風の対流による影響が思ったほどでは無かったようです。
半熱風シリンダーの場合は焙煎初期のガス圧を直火の場合より高めに設定したほうが締まった味わいになるようです。同じガス圧で比較する場合、火柱が近い直火シリンダーの方が豆に高い熱が伝わり、鉄板を介する半熱風シリンダーのほうが低い熱が伝わると思われます。

味わいの違いは明確にありました。
半熱風のほうは、当店の直火での焙煎よりも、まろやかですっきりした感じがします。直火は、よりシャープな感じがします。
しばしば直火のほうが豆の個性が出し易いという人がいますが、私の感じた印象では直火と半熱風は味の傾向が異なるものの、それぞれの味の傾向の中でどちらも豆の個性が出るように思えました。

また、試験した先週の木~金は気象条件の変動が激しく、湿度は夏並みから冬程度まで試せました。半熱風のシリンダーは湿度の影響を直火ほどは受けないように感じました。

シリンダー交換は2時間程度で可能なのですが(自分でやれるので)、自分としては半熱風シリンダーの味の傾向のほうが気に入りました。当面、半熱風シリンダーで作業してみようと考えています。

Dsc01003

直火シリンダーさん、3年間、お世話になりました。

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2010年3月12日 (金)

直火釜と半熱風釜の違いについて考察

当店で主に使用している3kg釜は直火式焙煎機、新しく購入した250g釜は半熱風式の焙煎機なのですが、この2種類の焙煎機の違いは何なのでしょうか。

どちらの焙煎機も、シリンダーという生豆を入れる部分があります。このシリンダーは円筒の筒を水平に横置きした状態で焙煎機の真ん中に置かれます。熱源はガスのバーナーで、これがシリンダーの真下にあります。さらにシリンダーの上蓋部に、シリンダー内部の空気を吸引する口があり、吸引量は調整可能となっています。

直火式と半熱風式で異なる部分はシリンダーの構造だけです。
シリンダーを交換するだけで、直火式焙煎機は半熱風式焙煎機に変わります。

直火式のシリンダーの円周部分には生豆より小さな直径の穴が複数開いており、底部は塞がれています。このため、バーナーで作られた熱風はシリンダーの円周部の無数の穴を通ってシリンダー上蓋部の吸引口に抜けていきます。
半熱風式のシリンダーの円周部分には穴がありません。かわりに底部分から空気を取り込めるような加工が施されており、バーナーで作られた熱風はシリンダーの底部から入ってシリンダー上蓋部の吸引口に抜けていきます。

絵がないので分かり難くて申し訳ないのですが、2つの方式の最も大きな違いは熱風が通る経路が異なることだと思うのです。直火式の場合、より直線的に熱風がシリンダーを通り抜けますのでダイレクトな操作感になるものの、上部からの吸引を強く行いすぎた場合には、バーナー近辺のまだ暖まっていない空気を熱風と一緒にシリンダー内に巻き込みやすいように思います。半熱風式の場合は一旦シリンダー後部(底部)に熱風が回り込んだ後にシリンダーに入る為、シリンダーに熱風が入るまでの距離が長く、その為に冷気の巻き込みの少ない、より安定した熱風がシリンダーに入るのかもしれないと思えます(計測はしていませんので半ば私の妄想ですが)。

また、直火式焙煎機はシリンダーに直に火が入ると言う人がいますが、私の使っているメーカーの釜の場合はバーナーとシリンダーの距離が適度に開いているので、火柱がシリンダーに入らない状態で焙煎出来ているように見えます。
従って、生豆を直接「焼く」ようなことはなく、「焼く」ことが直火釜の特性を決めているようには思えません。

2つの焙煎機を使用してみて思うのですが、双方の方式の特性を考慮して操作すれば、半熱風式だから、直火式だからといって、味わいの違いは大きくはないのではないかと思えます。ただし、直火式のほうが、よりシビアな操作が必要になるように思えます。
余裕ができたら3kg釜用に半熱風のシリンダーを買い増して、同じ3kg釜同士で、直火と半熱風の違いを試してみようと思っています。ちょっと先にはなりそうですが。

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2009年7月30日 (木)

焙煎時のデータ取得と、データロガー

焙煎時の温度変化をグラフ化したかったので、数年前にデータロガーを焙煎機に接続出来るようにしました。これで焙煎時の温度推移が保存できるようになりました。

Dsc00063_3

取得したデータはパソコンに取り込んでグラフ化できるし、その気になれば焙煎中にパソコン画面にリアルタイムでグラフを表示することも可能。なかなか便利。

ただし上手くいった時の温度カーブと同一になるような焙煎をしても、失敗する時は失敗するもの。データが採れれば全てオッケーにはなりません。

それでも、メモ書きのデータなども含め、何年か分のデータが累積されてくると、うまくいかない場合の対策も、以前より立てやすくなった気がします。

さらに、ダンパー操作に伴う排気風量の変化もデータ化したいところなのですが、こちらはハードルが高くて未だ実現できません。こちらもなんとかしたいところ。今後の課題です。

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