今年もスペシャルティコーヒー協会(SCAJ)のビックサイトのイベントに行ってきました。今年は例年になく面白かったです。自身の備忘の為、だらだら感想を記載します。焙煎仲間には少しは面白いと思うけれど、一般の人には興味が無い内容だと思います(と、あらかじめお断り)。
SCAJ2010は、コーヒー機材器具メーカー、生産地のコーヒー協会、生豆の輸入業者、パッケージ製造会社など、コーヒーに関わるあらゆる立場の人々が集まり、最新の情報を交換するイベントです。このイベントは、コーヒー業界の動向を把握するうえで外せません。
機材で面白かったもの
まずはディードリッヒの焙煎機。これまでの2kg以上の焙煎機と同一構造の、1kgのガスを熱源にした焙煎機が新たにリリースされていました。販社の説明によると、この1kgの焙煎機は、さらに容量の大きい上位機種で焙煎するための設定を試行するためのもの(プロファイルロースター)として作成されたものとのこと。価格的にもリーズナブルな設定で、自分としては喫茶中心の自家焙煎店ではメインの焙煎機としても使えそうに思えました。このクラスの焙煎機は、今までは井上製作所と富士珈機の独壇場だったと思うのですが、設計が新しい分、これらの会社の1kg釜と比べても見劣りしない機材に思えました。
次に面白かったのは、富士珈機の新しい焙煎機のレボリューション号。今年の冬に大阪の本社に伺った時に開発中だった機材ですが、いよいよ正式リリースされて出てきました。操作が前面のタッチパネルに集約されているとか、シリンダーを覆ったカーボン的なカバーとか、近未来的な感じがしました。サンプルローストされたコーヒーも美味しかった(自分好みの味わいと豊かな香り?!)ので、完成度は高そうです。説明を色々伺って興味深かったのは、大手ロースター向けの巨大な熱風釜のノウハウも、プロファイル設定に生かされているということ。この会社ならではのノウハウだなと思いました。他にも面白い話が聞けました。
抽出機材では、カリタさんの立てロシを使った新製品の1人用~の小型ドリッパーの開発コンセプトを聞けたこと。ロシの底を平らにすることで、ロシ全体の粉の高さを均一にして抽出しやすくすることを狙ったそうです。
飲料で面白かったもの
エスプレッソを試飲しました。FMIのチンバリーの業務機材と、ラッキークレマスのマルゾッコの業務機材で作ったエスプレッソ(どちらも有名なトップバリスタが抽出)は、口の中に強烈な香りが広がりました。これはドリップでは出せない香りだなと感じ、エスプレッソという飲み物を見直しました。また、20万円クラスの全自動のエスプレッソマシンで作ったエスプレッソも試したのですが、こちらは自分にはあまり面白みのない飲み物だと思えました。エスプレッソは面白そうですが、機材にお金をかけ、正しい技術で使いこなさないことには、意味が無いだろうと思いました。ハードルは高そうです。
イベント
ローストマスターズチャンピオンシップというイベントを見てきました。全国から6グループの焙煎屋のグループが参加し、課題豆として与えられたルワンダのミビリッチという生豆を焙煎してきて、これを皆で飲み比べ、焙煎方法などをプレゼンしてもらうイベントでした。評価は、世界各国(米国のSCAA会長、英国の生豆商社バイヤー、コスタリカ農園主、ニカラグアの人)の有名なジャッジが採点して評価する順位と、我々観客が飲み比べて評価する順位が別々に集計され、それぞれの1位のみ発表されます。
6グループのメンバーは、どこも前向きな姿勢を持ったロースターの集まりですので、それぞれのコーヒーは当然に致命的な欠点も無く、どれも美味しかったのですが、同じロットの生豆を使っても、やはりそれぞれに強い個性が出ていました。また、プロフェッショナルのジャッジがそれぞれのコーヒーについて分析した結果(香りの種類等)が、必ずしも同じにならない(というか、人毎にかなりマチマチ)というのも興味深かった。
私が一番美味しいと判断して投票したコーヒーはジャッジ側の集計で1位になり、妻が一番美味しいと判断して投票したコーヒーは観客の投票で一位になりました。この観客の投票で一位のコーヒーは酸味が一番強いものでした。この結果、一般的な感覚だと、酸味がある程度効いたコーヒーのほうが受け入れやすいのかなと思えました。そして殆どのジャッジはこのコーヒーだけは少し否定的な感じの評価だったように思えたのですが、コスタリカのジャッジだけは、すごくこれが気に入ったようでベタボメでした。統一的な味覚基準に沿って点数をつけているとはいえ、コスタリカのような酸味が強いコーヒーの産地のジャジは、酸味が強いものが美味しいと感じる味覚感覚になっているのかなぁと思いました。このあたり、世界的に統一化された感応評価というものの限界をみたように思えました。
焙煎方法の傾向としては、10分から12分前後で焙煎したものが5チーム、15分で焙煎したものが1チーム。ジャッジの1位のチームは10分ジャストの焙煎(ディートリッヒ3kg釜)、観客の1位のチームは9分50秒(ディートリッヒ12kg釜)で、どちらも1爆ぜから2爆ぜの間で仕上げているようでした。私も色々試して最近は比較的短い時間で焙煎するほうが味も香りも強く出て良いと感じているのですが、彼らの焙煎はさらに短い時間で行われているようです。それと、どのチームも常温で3~9日程度寝かせて(エージング)から持ってきているというのも興味深かったです。比較的短時間で焙煎した豆でも、完全焙煎されたものは、結構日持ちがするんだろうなと思えました。
このイベント、毎年、水曜~金曜の3日間で行われているので、例年は定休日の水曜に行くのですが、今年はローストマスターズチャンピオンシップの開催日程の金曜に合わせ、お店を臨時休業して行かせてもらいました。お客様にはご迷惑をおかけしてしまいましたが、例年以上に勉強になることが多かったと思います。今後の仕事に生かしていきたいと思っています。