珈琲の話

2013年8月23日 (金)

ペーパードリップについて

ペーパードリップの手順についてですが、まず全体にいきわたる位の量の湯を注いで、成分が抽出しやすい位に湯がなじんだ頃合いをみて本格的に抽出しています。このやり方自体は割と一般的だと思います。

自分の場合は円錐のドリッパーを用いて、中心あたりを狙って点滴で初期の湯を注いでいくのですが、全体を湿らせるまでに時間がかかるため、最初に抽出される微量の抽出液がペーパーに滲み広がってしまい、なかなかドリッパーに落ちません。
「全体を湿らせて粉に湯をなじませる」ことにある程度時間をかけたいのですが、初期の抽出液はペーパーに滲み広がせることなく、早くペーパーを通過させてドリッパーに落としたい、という、少々矛盾したことをやりたいと考えていました。

ある日、気が付いたのが、円錐ペーパーの下半分くらいをしめらせてから抽出すること。こうすると、乾いたペーパーを使って抽出する場合に比べ、初期の微量の抽出液が早くペーパーを通過するようです。

何度か、乾いたペーパーと濡れたペーパーを使って珈琲を抽出し比較しましたが、私の抽出方法の場合には濡れたペーパーを用いたほうが香りとコクが少し強く出るようです。

話は変わりますが、目の細かい網(茶漉し等)で、トロっとした粘度のある液体(生クリームなどが分かりやすい)を濾す場合も同じで、最初の1滴が網を通過するまではえらく時間がかかり、1滴通過してしまうと、後の液体は比較的スムーズに網を通過します。さらに、網を湿らせてから同じことをすると、最初の1滴が網を通過するまでの時間はずっと短くなります。表面張力かなにかの関係だと思いますが、詳しい理屈は分かりません。
これと同じような現象なのかな、と思っています。

フィルターペーパーを濡らしてから抽出する、というと、よく「紙の匂いを消す為」という説明をする人がいますが、そうではない理由でペーパーを湿らせて抽出してます。興味のある人は試してみて下さい。

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2012年3月17日 (土)

ラオスでティピカを栽培している?

暫く前に、お客様からラオスのコーヒー生豆を頂きました。

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このお客様、手網焙煎がご趣味で、仕事で行ったラオスで生豆を入手したとのこと。

下の写真の左側は日本で入手しやすいラオスのエレファントマウンテンという豆。右が頂いた豆。エレファントマウンテンはハイブリッド(やや記憶が曖昧)で大粒なのに対し、頂いた豆は大きさが小さめで不揃い。ラベルにアラビカティピカと記載されており、形状も薄く細長く、ティピカらしい外見をしています。アジアでティピカを栽培している産地を私は知らなかったので、驚きました。
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お客様が現地のコーヒー関係者から伺った話では、ラオスではロブスタ種のコーヒーを標高1000m以上の地点で栽培する試みも行われているとのこと。ロブスタというとアラビカが栽培不可能な低地で栽培するものと認識していましたので、これも面白い話だなと思いました。

ティピカにしろ、ロブスタにしろ、ラオスのコーヒー関係者の本気度が伺えて興味深いです。先の展開がとても楽しみです。

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2011年7月 1日 (金)

コーヒー生豆の保管方法について

3~4年前はサンプルロースターなんて持ってなかったので、半端にあまってしまった生豆が麻袋の底に残っていて、そういうのが捨て忘れて今でも幾つかあるのですが、既に生豆の状態でもそれと分かる枯れ臭が出ていて、試しにサンプルローストすると枯れ臭が酷くて飲めたものではありません。やはり3年前に仲間の焙煎屋が500gだけガスバリア袋に密封して持ってきてくれたサンプル生豆が見つかったので空けてみると、こちらは枯れ臭が殆どしない。炒っても、まぁ、飲める感じでした。

ほんの少し前まで、生豆は「呼吸」してるので、通気性がある麻袋に入れて保管すべし、というのが常識とされていました。これに疑問を持ったので少し調べていたのですが、例えばお米については、玄米は本当に呼吸していて、温度が上昇すると炭酸ガスの排出量が増え、気温その他の条件が整うと発芽します。しかし、精米済みの白米は発芽できません。玄米は生きているから呼吸していて、白米は生きていないので呼吸しないと理解したのですが、コーヒーの実については、生豆の周りに少し厚めの皮がついた状態(=パーチメントコーヒー)だと発芽可能で、我々が生豆として購入する状態だと発芽出来ません。米になぞらえて推測すると、パーチメントコーヒーは生きていて呼吸し、生豆は空気の乾燥度合いに応じて湿気を帯びたり乾燥したりしているだけのように思えます。
そう考えると、生豆は一般の食料品と同じく、酸化を抑えるために密封して保存するほうがふさわしいように思えます。
最近はスペシャリティグレードの生豆は原産国でビニール袋で密封して、それを麻袋に入れてリーファーコンテナで輸出するような形態が多く目に付くようになりました。「通気性を良くして」という発想が、世界的に見直されつつあるように思えます。

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2010年9月24日 (金)

SCAJ2010参加

今年もスペシャルティコーヒー協会(SCAJ)のビックサイトのイベントに行ってきました。今年は例年になく面白かったです。自身の備忘の為、だらだら感想を記載します。焙煎仲間には少しは面白いと思うけれど、一般の人には興味が無い内容だと思います(と、あらかじめお断り)。

SCAJ2010は、コーヒー機材器具メーカー、生産地のコーヒー協会、生豆の輸入業者、パッケージ製造会社など、コーヒーに関わるあらゆる立場の人々が集まり、最新の情報を交換するイベントです。このイベントは、コーヒー業界の動向を把握するうえで外せません。

機材で面白かったもの

まずはディードリッヒの焙煎機。これまでの2kg以上の焙煎機と同一構造の、1kgのガスを熱源にした焙煎機が新たにリリースされていました。販社の説明によると、この1kgの焙煎機は、さらに容量の大きい上位機種で焙煎するための設定を試行するためのもの(プロファイルロースター)として作成されたものとのこと。価格的にもリーズナブルな設定で、自分としては喫茶中心の自家焙煎店ではメインの焙煎機としても使えそうに思えました。このクラスの焙煎機は、今までは井上製作所と富士珈機の独壇場だったと思うのですが、設計が新しい分、これらの会社の1kg釜と比べても見劣りしない機材に思えました。

次に面白かったのは、富士珈機の新しい焙煎機のレボリューション号。今年の冬に大阪の本社に伺った時に開発中だった機材ですが、いよいよ正式リリースされて出てきました。操作が前面のタッチパネルに集約されているとか、シリンダーを覆ったカーボン的なカバーとか、近未来的な感じがしました。サンプルローストされたコーヒーも美味しかった(自分好みの味わいと豊かな香り?!)ので、完成度は高そうです。説明を色々伺って興味深かったのは、大手ロースター向けの巨大な熱風釜のノウハウも、プロファイル設定に生かされているということ。この会社ならではのノウハウだなと思いました。他にも面白い話が聞けました。

抽出機材では、カリタさんの立てロシを使った新製品の1人用~の小型ドリッパーの開発コンセプトを聞けたこと。ロシの底を平らにすることで、ロシ全体の粉の高さを均一にして抽出しやすくすることを狙ったそうです。

飲料で面白かったもの

エスプレッソを試飲しました。FMIのチンバリーの業務機材と、ラッキークレマスのマルゾッコの業務機材で作ったエスプレッソ(どちらも有名なトップバリスタが抽出)は、口の中に強烈な香りが広がりました。これはドリップでは出せない香りだなと感じ、エスプレッソという飲み物を見直しました。また、20万円クラスの全自動のエスプレッソマシンで作ったエスプレッソも試したのですが、こちらは自分にはあまり面白みのない飲み物だと思えました。エスプレッソは面白そうですが、機材にお金をかけ、正しい技術で使いこなさないことには、意味が無いだろうと思いました。ハードルは高そうです。

イベント
ローストマスターズチャンピオンシップというイベントを見てきました。全国から6グループの焙煎屋のグループが参加し、課題豆として与えられたルワンダのミビリッチという生豆を焙煎してきて、これを皆で飲み比べ、焙煎方法などをプレゼンしてもらうイベントでした。評価は、世界各国(米国のSCAA会長、英国の生豆商社バイヤー、コスタリカ農園主、ニカラグアの人)の有名なジャッジが採点して評価する順位と、我々観客が飲み比べて評価する順位が別々に集計され、それぞれの1位のみ発表されます。
6グループのメンバーは、どこも前向きな姿勢を持ったロースターの集まりですので、それぞれのコーヒーは当然に致命的な欠点も無く、どれも美味しかったのですが、同じロットの生豆を使っても、やはりそれぞれに強い個性が出ていました。また、プロフェッショナルのジャッジがそれぞれのコーヒーについて分析した結果(香りの種類等)が、必ずしも同じにならない(というか、人毎にかなりマチマチ)というのも興味深かった。
私が一番美味しいと判断して投票したコーヒーはジャッジ側の集計で1位になり、妻が一番美味しいと判断して投票したコーヒーは観客の投票で一位になりました。この観客の投票で一位のコーヒーは酸味が一番強いものでした。この結果、一般的な感覚だと、酸味がある程度効いたコーヒーのほうが受け入れやすいのかなと思えました。そして殆どのジャッジはこのコーヒーだけは少し否定的な感じの評価だったように思えたのですが、コスタリカのジャッジだけは、すごくこれが気に入ったようでベタボメでした。統一的な味覚基準に沿って点数をつけているとはいえ、コスタリカのような酸味が強いコーヒーの産地のジャジは、酸味が強いものが美味しいと感じる味覚感覚になっているのかなぁと思いました。このあたり、世界的に統一化された感応評価というものの限界をみたように思えました。
焙煎方法の傾向としては、10分から12分前後で焙煎したものが5チーム、15分で焙煎したものが1チーム。ジャッジの1位のチームは10分ジャストの焙煎(ディートリッヒ3kg釜)、観客の1位のチームは9分50秒(ディートリッヒ12kg釜)で、どちらも1爆ぜから2爆ぜの間で仕上げているようでした。私も色々試して最近は比較的短い時間で焙煎するほうが味も香りも強く出て良いと感じているのですが、彼らの焙煎はさらに短い時間で行われているようです。それと、どのチームも常温で3~9日程度寝かせて(エージング)から持ってきているというのも興味深かったです。比較的短時間で焙煎した豆でも、完全焙煎されたものは、結構日持ちがするんだろうなと思えました。

このイベント、毎年、水曜~金曜の3日間で行われているので、例年は定休日の水曜に行くのですが、今年はローストマスターズチャンピオンシップの開催日程の金曜に合わせ、お店を臨時休業して行かせてもらいました。お客様にはご迷惑をおかけしてしまいましたが、例年以上に勉強になることが多かったと思います。今後の仕事に生かしていきたいと思っています。

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2007年11月 4日 (日)

珈琲豆の格付けの話

珈琲豆の格付けは、生産国でつくられた独自の基準が、古くから存在しています。
主なものは以下の通りです。

・標高による格付け(標高が高いほど良い)
中米諸国で用いられる。グァテマラの場合、標高1300m以上で栽培された珈琲豆が最高規格のSHB。

・生豆の大きさによる格付け(大きい程格付けが高い)
コロンビア、タンザニアなどで採用。コロンビアはスクリーンサイズ17以上が最高格付けのスプレモ、タンザニアは17以上が最高格付けのAA。

・単位量あたりの欠点数による格付け
エチオピアなどで採用。エチオピアの場合、300gあたりの欠点数が3以下の場合、最高格付けのグレード1。

・欠点数とスクリーンサイズの併用
ブラジルの格付け。スクリーンサイズ17~18で、300gあたりの欠点数4~10が流通上の最高格付けのナンバー2。

ここで気をつけなければいけないのは、これらの格付けは味覚上の特徴についての尺度ではなく、「生豆の外見の良し悪しの評価基準」だということです。

本来は良質なコーヒー生豆を評価する為に作ったと思われる外見上の格付けですが、近年(1980年代以降)、珈琲生産国では生産性を重視した品種改良がさかんに行われ、外見は良いが飲むと美味しくない珈琲が増え、消費国側で問題になるとともに、そういった珈琲は格付けが高いのに価格が下がるという現象がおきています(生産国で格付けの高い珈琲が、消費国側では必ずしも高く評価されない)。

このような現状に対し、もっと直接的に、珈琲の味覚上の特徴を判断する基準を作る動きが消費国側で起こり、世界的に広まりつつあります。最近、日本の一部一般誌でも取り上げられている「スペシャルティコーヒー」の評価基準が、これにあたります。

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2007年10月14日 (日)

ご家庭で珈琲を淹れる為には

珈琲のハンドドリップを楽しむ為に、必要な器具についてご説明したいと思います。

Sh531027◎最低限、必要な器具

・フィルター(上)、サーバー(下)、濾紙

上記があれば、珈琲粉をセットして、お手持ちのやかんなどでお湯を注ぐことで、抽出が可能です。




Sh531028◎より美味しく味わう為に揃えたほうがよい器具

・細口の珈琲ポット

細口の珈琲ポットがあると、お湯を少しずつ注ぐことが可能になり、珈琲の美味しさが飛躍的に上がります。但し、珈琲ポットにはファッション性重視で使い難いものもあります。お湯を細く真下に垂らせるポットが使い易いのですが、見た目の形だけで判断するのは難しいと思います。
当店のお勧めするポットは、カリタの細口ポット(写真)です。
ちょっと横長ですがハリオのBuonoも良いようです。

・珈琲ミル
珈琲豆は粉にしてしまうと香りの抜けが早くなるので、飲む直前に挽くことがお勧めです。粉で買って何日か経過してから飲むより、仮に低価格の珈琲ミルを使う場合でも直前に挽いて飲んだほうが珈琲が美味しいはずです。
珈琲ミルには、電気式、手廻し式があります。手廻し式は結構疲れるので、頻繁に珈琲を飲む方には電気式をお勧めしています。

以上、珈琲器具を揃えると、珈琲タイムがより楽しくなります。
当店ではカリタ、コーノの器具を、現在25%OFFでご提供しております。
試供品も多数用意してございますので、ぜひ、使い勝手を確かめてみて下さい。

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